ジェイドとフロイドは、今日も子狐気分で野原をゴロゴロと転がりながら――不思議とこんな事をしてて時間が潰せてしまうのだ――、アズールがせっせと世話をする薬草園の側で作業をして居るアズールを眺めていた。
アズールは今日も人間に売りつけるためと、薬の材料を収穫し、籠の中に葉っぱや花を放り込む。
籠の中に入れたものを、この後更に選別し、乾燥させたりして薬の材料にするのだという。
最初に聞いた時は二匹は驚いたものである。そんなまどろっこしい――腹が減れば動いている動物や人間を口に放り込んでいた――事をして、その対価というやつで金ぴかの食いでのなさそうなものや、食べ物を分けて貰うのだ。
面倒である。アズールもそう認識している。それだというのに、毎日作業をして薬を売り、魚や野菜などを手に戻ってくると、ほくほくと笑顔で二匹に食事を作りながら今日会った患者や人々の話をしながら手に入れてきた食べ物を食べる。
それは知らなかった世界で、二匹は子狐の姿のままアズールの側に留まり、そのまま自称助手となっていた。
「……ふう」
ござの脇に座ったアズールの側に、ジェイドとフロイドはさっと飛んでいき、籠からバラバラと葉っぱや花を広げたアズールの横で、教えて貰ったように仕訳をはじめた。
「あれ、アズール、この籠」
ふと、作業をしていたフロイドは籠の底を覗き込むように体を伸ばした。
「なんか、下の方穴開いてね?」
「……あ、本当ですよアズール。この端の方少し歪んでますよ」
「え、ほんとうですか」
アズールはぽてぽてとした体を起こして籠を手にし、ひっくり返して、ああ、としっぽをぶわっとさせた。
「壊れちゃった?」
「そうですね、畑を作った頃に一緒に作ったものだから古くなってきたのでしょう。組んだ木の皮がずれたりして、削れて薄くなっている部分もありますね」
アズールはふむふむと籠をひっくり返しながら、眉をひそめ
「うーん、直すのは難しいから作り直した方が良い、か……」
ジェイドとフロイドはへえ、と瞬きしてアズールにぴったりと体を寄せ
「作るって、アズールが?」
「ええ、道具類は買った物もありますが、最初の頃は全部自分でなんとかしましたからね。まずは、木の皮や蔦を拾ってきましょうか」
どっこらしょ、と立ち上がろうとしたアズールに、ささっとジェイドとフロイドは手を上げ
「僕達探してきますよ!」
「木の皮とか蔦でしょ、任せてよ。アズールは薬草の選別とかしないとでしょ?」
「しかしかなり量が必要ですよ」
二匹は大丈夫とぴょんぴょん跳ね、森の中に入っていった。
「……大丈夫でしょうか」
心配しつつ、アズールはござの上の葉っぱを選別し始めた。
太陽が少しばかり傾いて、そろそろお昼ご飯を用意しましょうか、と考えていたアズールの元に、どうやら狐の姿では持っていくのが大変だったのか、アズールも偶にちょっとびっくりする大きな人間の姿で木の皮や蔦を両手に抱えてジェイドとフロイドが戻ってきた。
「これだけあれば予備のも作れそうですねぇ」
すごいじゃないですか、とアズールは人間の二人の手を伸ばそうとして、届かないな……と両手を挙げてパタパタとしっぽを振った。
「えへへーすげー頑張ったんだから」
「はい、かなり森や山の中を探しましたよ」
二匹はぱっと元の子狐の姿に戻ると、アズールに撫でて貰うためにぐいぐいと頭をアズールの方に差しだした。
「ねえどうやって作るの?」
「では、ちょうど薬草のほうの処理も終わったからご飯を食べたら作りましょうか」
そう言いながら、アズールはその前に、と二匹の頭を撫でてから、ちょいちょいと手招きした。
「毛に沢山草やひっつき虫が付いていますよ。探し回ったときに付いたんですね」
「えへへー」
さっとジェイドがどうしようかと悩んでいる脇でフロイドがさっとアズールのふわふわのたぬ膝に体を乗せると、アズールは草やひっつき虫を丁寧に取り除きはじめた。横で先を越されたジェイドが余りのことにぷるぷるとしっぽを震わせたが、汚れが取れたのかアズールはジェイドを呼び、フロイドが何か言う前にジェイドはばっと滑り込んだ。
両脇からぽかぽかと膝の場所取りをはじめる二匹を、こらこら、と窘めつつ、アズールは二匹の毛に付いた汚れを取り除き、毛並みを整えながら、自分はそういえば毛繕いをして貰った記憶が無いな、とぼんやりと考え、すぐに喧嘩をし始めそうな二匹の方に意識がそれた。
今となってはどうでもいい話である。
「ふう、きれいになりましたね」
つやつやになった二匹を満足げに眺め、アズールはご飯にしましょうと機嫌良くしっぽを振りながら歩き出した。
アズールは今日も人間に売りつけるためと、薬の材料を収穫し、籠の中に葉っぱや花を放り込む。
籠の中に入れたものを、この後更に選別し、乾燥させたりして薬の材料にするのだという。
最初に聞いた時は二匹は驚いたものである。そんなまどろっこしい――腹が減れば動いている動物や人間を口に放り込んでいた――事をして、その対価というやつで金ぴかの食いでのなさそうなものや、食べ物を分けて貰うのだ。
面倒である。アズールもそう認識している。それだというのに、毎日作業をして薬を売り、魚や野菜などを手に戻ってくると、ほくほくと笑顔で二匹に食事を作りながら今日会った患者や人々の話をしながら手に入れてきた食べ物を食べる。
それは知らなかった世界で、二匹は子狐の姿のままアズールの側に留まり、そのまま自称助手となっていた。
「……ふう」
ござの脇に座ったアズールの側に、ジェイドとフロイドはさっと飛んでいき、籠からバラバラと葉っぱや花を広げたアズールの横で、教えて貰ったように仕訳をはじめた。
「あれ、アズール、この籠」
ふと、作業をしていたフロイドは籠の底を覗き込むように体を伸ばした。
「なんか、下の方穴開いてね?」
「……あ、本当ですよアズール。この端の方少し歪んでますよ」
「え、ほんとうですか」
アズールはぽてぽてとした体を起こして籠を手にし、ひっくり返して、ああ、としっぽをぶわっとさせた。
「壊れちゃった?」
「そうですね、畑を作った頃に一緒に作ったものだから古くなってきたのでしょう。組んだ木の皮がずれたりして、削れて薄くなっている部分もありますね」
アズールはふむふむと籠をひっくり返しながら、眉をひそめ
「うーん、直すのは難しいから作り直した方が良い、か……」
ジェイドとフロイドはへえ、と瞬きしてアズールにぴったりと体を寄せ
「作るって、アズールが?」
「ええ、道具類は買った物もありますが、最初の頃は全部自分でなんとかしましたからね。まずは、木の皮や蔦を拾ってきましょうか」
どっこらしょ、と立ち上がろうとしたアズールに、ささっとジェイドとフロイドは手を上げ
「僕達探してきますよ!」
「木の皮とか蔦でしょ、任せてよ。アズールは薬草の選別とかしないとでしょ?」
「しかしかなり量が必要ですよ」
二匹は大丈夫とぴょんぴょん跳ね、森の中に入っていった。
「……大丈夫でしょうか」
心配しつつ、アズールはござの上の葉っぱを選別し始めた。
太陽が少しばかり傾いて、そろそろお昼ご飯を用意しましょうか、と考えていたアズールの元に、どうやら狐の姿では持っていくのが大変だったのか、アズールも偶にちょっとびっくりする大きな人間の姿で木の皮や蔦を両手に抱えてジェイドとフロイドが戻ってきた。
「これだけあれば予備のも作れそうですねぇ」
すごいじゃないですか、とアズールは人間の二人の手を伸ばそうとして、届かないな……と両手を挙げてパタパタとしっぽを振った。
「えへへーすげー頑張ったんだから」
「はい、かなり森や山の中を探しましたよ」
二匹はぱっと元の子狐の姿に戻ると、アズールに撫でて貰うためにぐいぐいと頭をアズールの方に差しだした。
「ねえどうやって作るの?」
「では、ちょうど薬草のほうの処理も終わったからご飯を食べたら作りましょうか」
そう言いながら、アズールはその前に、と二匹の頭を撫でてから、ちょいちょいと手招きした。
「毛に沢山草やひっつき虫が付いていますよ。探し回ったときに付いたんですね」
「えへへー」
さっとジェイドがどうしようかと悩んでいる脇でフロイドがさっとアズールのふわふわのたぬ膝に体を乗せると、アズールは草やひっつき虫を丁寧に取り除きはじめた。横で先を越されたジェイドが余りのことにぷるぷるとしっぽを震わせたが、汚れが取れたのかアズールはジェイドを呼び、フロイドが何か言う前にジェイドはばっと滑り込んだ。
両脇からぽかぽかと膝の場所取りをはじめる二匹を、こらこら、と窘めつつ、アズールは二匹の毛に付いた汚れを取り除き、毛並みを整えながら、自分はそういえば毛繕いをして貰った記憶が無いな、とぼんやりと考え、すぐに喧嘩をし始めそうな二匹の方に意識がそれた。
今となってはどうでもいい話である。
「ふう、きれいになりましたね」
つやつやになった二匹を満足げに眺め、アズールはご飯にしましょうと機嫌良くしっぽを振りながら歩き出した。