タグ「けだま」を含む投稿[1件]
#けだまWeekendということで訳ありけだまでイドアズ。
あずえながとイド狼(人狼)のお話
わけありけだまたち
さくさくと雪を踏みしめ、慎重に歩いていた獣は匂いを嗅いで、仲間に告げるように空に向かって遠吠えをあげた。
少しすると木立の向こうから同じような遠吠えが答え、雪を踏むような音と共に姿の似た獣が現れた。
「ごめーん」
「気をつけてくださいね」
二頭だけの群れは、雪の中を並んで歩き、さて困ったと辺りに目をやった。
「何あれ」
「鳥、ですかね」
二頭の狼は、そっとそれに目を向け近寄った。
雪の上にぽつんと黒いものが突き出ていて、彼らはすんすんとそれに鼻を近づけ、前足で小突いた。
「びぎゅー!!」
ぼん、と雪玉が飛び出し、顔を近づけていた一頭の顎を直撃し、雪玉はひゅんひゅんと二頭の上を弾けるように飛び跳ねた。
「うわーびっくりしたぁ」
「大丈夫ですかフロイド」
大して心配していないらしいうなり声をあげ、様子を見ていたもう一頭は跳ね回る白い球をじっと見つめ、えい、とタイミング良く口で引っかけた。
「離しなさいこのけだもの!」
どうやら尾羽を歯の先で引っかけられたらしい。フロイドと呼ばれた方はスンスンと顔を近づけ、ええ、と呟いた。
「何ソレジェイド。鳥ー? こんなやつ見たこと無いけど」
「そうです? 僕よく見えないんですけど」
「別に食べたりしねーから暴れるのやめてくんね」
「本当でしょうね」
「いや、こんなちっちゃいの食べてもお腹いっぱいにならないし」
「ただ暴れられるとうっかりこのままぱくっと」
「ぴぎゅ」
気のせいか、フロイドが見ているとひゅっとからだが縦に縮んだようにみえた白い鳥は、ジェイドが緩めた歯の隙間から尾羽を引っ張りだし、その勢いのまま雪の中をコロコロと転がった。
「酷い目に遭った」
羽根をパタパタと震わせ、ぴょんと飛び上がったそれを前に、二頭は顔を見合わせた。
似たような鳥を見た事はあるが、やはりここまで真っ白なのは見たことが無い。
「なんであんな何にもねえところで転がってたの」
「なんでって」
ちき、と小さくさえずり、その鳥はキョロキョロと辺りを見渡し、瞬きをして頭をぐっと捻った。
「……ここはどこです?」
「えー……」
「おやおや」
ぴょんぴょんと跳ねる白いけだまは、ジェイドとフロイドの頭の上にどうにかよいしょと勝手によじ登り、ちゅりちゅりと鳴き声を上げて二頭の頭の上を交互に跳ねた。
「もしかして迷子ですか」
「いえ、そういう訳では。元々は林の中にいて……それから」
ちい、と小さなさえずりのあと、小鳥はフロイドの額の上にもふっと座り込み、ため息のようなさえずりをした。
事情があるのか、何か思い出したくないことでもあるのか、黙りこんだ小鳥に、二頭は目を合わせて小さく頷いた。
「まあ何でもいいけど。オレ達だって群れから追い出されたしねぇ」
「まあ、そうですね。小鳥さん、しばらく僕らと一緒に居てみませんか」
「小鳥じゃありません。アズールという立派な名前があります」
ふっと胸を反らせてふわふわのからだを膨らませたアズールに、ジェイドとフロイドはおやおやと眉を寄せた。
「そうですか。まあ気が向いたら覚えるかもしれませんね」
「そうだねー。あーあ腹減ったジェイドー」
「ああ、肉なら……僕はそっちから多分とん出来たと思うんですが……。別の生き物が狩りをしていたのを見ましたよ」
羽根で指し示した方向に顔を向け、二頭は顔を合わせてぐるぐると機嫌良く唸り
「それじゃ、今はあらかた勝負着いただろうし、横取りでもしよっかぁ」
「そうですね。両方頂けるかもしれませんし」
「良い心がけですね!」
パタパタと再び元気になったアズールは、ジェイドの方に移動してぴょんぴょんと跳ね、
「とはいえ、二頭だけのお前達と、相手はどちらも相手取るなら四頭を相手にしなければなりませんからね。空からかっさらうものもいるでしょうし、気を抜ける訳じゃありませんよ」
ちきちきと小鳥がいう事に、ジェイドとフロイドは思わずこれが小鳥の考える事か? と顔をしかめた。小鳥と会話したことが無いので解らないが、もう少し違う事を言う物じゃないだろうか。
「しかし、そう言われてみるとそうですね」
「森の中に引き寄せた方が良いかもしんないって事?」
「それなら、僕は木の上から様子を見ていられるから僕と組むとお得ですね」
素晴らしいでしょう、と更に胸を膨らませたアズールに、二頭はまあそうか、と納得してうん、と頷いた。その動きで、コロコロと雪原に転がったアズールは、ぴちぴちと不満を口にしつつ、今度はフロイドの背中に移動した。
畳む
あずえながとイド狼(人狼)のお話
わけありけだまたち
さくさくと雪を踏みしめ、慎重に歩いていた獣は匂いを嗅いで、仲間に告げるように空に向かって遠吠えをあげた。
少しすると木立の向こうから同じような遠吠えが答え、雪を踏むような音と共に姿の似た獣が現れた。
「ごめーん」
「気をつけてくださいね」
二頭だけの群れは、雪の中を並んで歩き、さて困ったと辺りに目をやった。
「何あれ」
「鳥、ですかね」
二頭の狼は、そっとそれに目を向け近寄った。
雪の上にぽつんと黒いものが突き出ていて、彼らはすんすんとそれに鼻を近づけ、前足で小突いた。
「びぎゅー!!」
ぼん、と雪玉が飛び出し、顔を近づけていた一頭の顎を直撃し、雪玉はひゅんひゅんと二頭の上を弾けるように飛び跳ねた。
「うわーびっくりしたぁ」
「大丈夫ですかフロイド」
大して心配していないらしいうなり声をあげ、様子を見ていたもう一頭は跳ね回る白い球をじっと見つめ、えい、とタイミング良く口で引っかけた。
「離しなさいこのけだもの!」
どうやら尾羽を歯の先で引っかけられたらしい。フロイドと呼ばれた方はスンスンと顔を近づけ、ええ、と呟いた。
「何ソレジェイド。鳥ー? こんなやつ見たこと無いけど」
「そうです? 僕よく見えないんですけど」
「別に食べたりしねーから暴れるのやめてくんね」
「本当でしょうね」
「いや、こんなちっちゃいの食べてもお腹いっぱいにならないし」
「ただ暴れられるとうっかりこのままぱくっと」
「ぴぎゅ」
気のせいか、フロイドが見ているとひゅっとからだが縦に縮んだようにみえた白い鳥は、ジェイドが緩めた歯の隙間から尾羽を引っ張りだし、その勢いのまま雪の中をコロコロと転がった。
「酷い目に遭った」
羽根をパタパタと震わせ、ぴょんと飛び上がったそれを前に、二頭は顔を見合わせた。
似たような鳥を見た事はあるが、やはりここまで真っ白なのは見たことが無い。
「なんであんな何にもねえところで転がってたの」
「なんでって」
ちき、と小さくさえずり、その鳥はキョロキョロと辺りを見渡し、瞬きをして頭をぐっと捻った。
「……ここはどこです?」
「えー……」
「おやおや」
ぴょんぴょんと跳ねる白いけだまは、ジェイドとフロイドの頭の上にどうにかよいしょと勝手によじ登り、ちゅりちゅりと鳴き声を上げて二頭の頭の上を交互に跳ねた。
「もしかして迷子ですか」
「いえ、そういう訳では。元々は林の中にいて……それから」
ちい、と小さなさえずりのあと、小鳥はフロイドの額の上にもふっと座り込み、ため息のようなさえずりをした。
事情があるのか、何か思い出したくないことでもあるのか、黙りこんだ小鳥に、二頭は目を合わせて小さく頷いた。
「まあ何でもいいけど。オレ達だって群れから追い出されたしねぇ」
「まあ、そうですね。小鳥さん、しばらく僕らと一緒に居てみませんか」
「小鳥じゃありません。アズールという立派な名前があります」
ふっと胸を反らせてふわふわのからだを膨らませたアズールに、ジェイドとフロイドはおやおやと眉を寄せた。
「そうですか。まあ気が向いたら覚えるかもしれませんね」
「そうだねー。あーあ腹減ったジェイドー」
「ああ、肉なら……僕はそっちから多分とん出来たと思うんですが……。別の生き物が狩りをしていたのを見ましたよ」
羽根で指し示した方向に顔を向け、二頭は顔を合わせてぐるぐると機嫌良く唸り
「それじゃ、今はあらかた勝負着いただろうし、横取りでもしよっかぁ」
「そうですね。両方頂けるかもしれませんし」
「良い心がけですね!」
パタパタと再び元気になったアズールは、ジェイドの方に移動してぴょんぴょんと跳ね、
「とはいえ、二頭だけのお前達と、相手はどちらも相手取るなら四頭を相手にしなければなりませんからね。空からかっさらうものもいるでしょうし、気を抜ける訳じゃありませんよ」
ちきちきと小鳥がいう事に、ジェイドとフロイドは思わずこれが小鳥の考える事か? と顔をしかめた。小鳥と会話したことが無いので解らないが、もう少し違う事を言う物じゃないだろうか。
「しかし、そう言われてみるとそうですね」
「森の中に引き寄せた方が良いかもしんないって事?」
「それなら、僕は木の上から様子を見ていられるから僕と組むとお得ですね」
素晴らしいでしょう、と更に胸を膨らませたアズールに、二頭はまあそうか、と納得してうん、と頷いた。その動きで、コロコロと雪原に転がったアズールは、ぴちぴちと不満を口にしつつ、今度はフロイドの背中に移動した。
畳む